シェーンベルク 《グレの歌》 ~祝!解禁~

オペラ先日5月21日で、日本におけるシェーンベルクの著作権保護期間(戦時加算を含む)が終了しました。シェーンベルク 《グレの歌》の対訳テンプレートを公開します。

対訳テンプレートはこちら → グレの歌

オペラ対訳プロジェクトではオペラの歌詞対訳の他に、カンタータやオラトリオの歌詞対訳をオマケ的に扱っています。ウィキペディアによると、この作品は「シェーンベルク自身はカンタータとも世俗オラトリオとも分類していないが、規模や演奏形態からすると、所作を伴わないオペラと見ることもできる」んだそうです。

《グレの歌》の歌詞は「デンマークの作家イェンス・ペーター・ヤコブセンの未完の小説『サボテンの花開く』の中の詩をローベルト・フランツ・アルノルトがドイツ語に翻訳したものに基づいて」います。テキストの著作者、ヤコブセン、フランツ・アルノルト、いずれも保護期間はずっと昔にに終了しています。《グレの歌》のリブレットだけなら、2012年5月21日のシェーンベルクの著作権保護期間終了を待たずとも公開することができたのでしょうか?

作曲者、台本作家の著作権保護期間終了日が異なる場合(当然異なることが多いのですが)、テキストを公開したり翻訳したりするだけなら、台本作家の著作権保護期間だけを考慮すればよいのでしょうか。それとも作曲者のそれも考慮すべきなのでしょうか。私にはいまだにわかりません。当プロジェクトでは安全サイドに振って、両者の著作権保護期間が終了するのを待って、テキストを公開するようにしています。

というのも、カール・オルフ《カルミナ・ブラーナ》のような例があるためです。ご承知の通り、この曲の歌詞はボイレン修道院で見つかったラテン語のテキストをそのまま利用しています。いわゆる「詠み人知らず」ですし、そもそも中世に著作権なんてありませんから、テキスト自体はパブリック・ドメインのはずです。しかし、しばしば利用している OPERA GUIDE には、《カルミナ》のリブレットを掲載する代わりにこんな記述があります。

Aus den rund 250 Texten der mittelalterlichen Handschrift aus der Abtei Benediktbeuren traf Carl Orff eine kleine Auswahl und stellte diese in einen eigenen Zusammenhang. Der Verlag beansprucht für diesen schöpferischen Akt den Schutz des Copyrights.

昔はこのドイツ語と英訳も掲載されていたんですけど、サイト・リニューアル後無くなったようです。プロジェクトにコピペしておいた英訳によりますと、「…オルフは少しだけ選んで、独自の文脈につなぎ合わせた。出版社はこの創造的行為に対し、著作権を主張するものである。」と。

《グレの歌》の場合、シェーンベルクがどのようにテキストを扱ったのかわかりませんが、リブレットが特にその作曲家の作品目的に作られている場合を除くと、作曲者自身がカットしたり前後を入れ替えたり、テキストに対してもなんらかの「創造的行為」を及ぼしている例は多いと思われます。台本作家の著作権保護期間が切れているからといって、テキストを公開したりすると、思わぬ所から訴えられたりしかねないわけです。

それでも、裁判所で白黒つければいいのでしょうけど、チキンハートな管理人には、そんなリスクを犯してまでテキストを公開する度胸はありません。

グレの歌
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