R. シュトラウス 《4つの最後の歌》 YouTube動画公開

オペラ本日はリヒャルト・シュトラウスの150回目の誕生日です。お祝いに《4つの最後の歌》のドイツ語日本語対訳字幕付きYouTube動画を作成しました。

YouTube → シュヴァルツコップ(アッカーマン)
YouTube → デラ・カーザ(ベーム)

《4つの最後の歌》はもちろんオペラではなくオーケストラ伴奏付き歌曲ですので本来オペラ対訳プロジェクトの対象外なんですが、今日は特別です。

日本語訳はwagnerianchanさまです。ブログで公開されていた訳文の転載をお許しいただいたばかりかこの機会に見直していただきました。いつもありがとうございます。行間の読みの深さ、日本語のイメージの豊かさ、すばらしいです。

「夕映えの中で」冒頭のフレーズ「手に手を取って歩いてきたね。」この最後の「ね。」がなくても訳文の正確さは一切損なわれないのですが、あるとないとでは日本語から受けるイメージはまるで違う。「In dieser Einsamkeit」は英語なら「In this solitude」なんですが、みなさんならどう訳します?直訳ではまるで伝わらないこういう箇所の訳し方、ほんと感心します。リヒャルトと妻パウリーネが投げるふたつの長い影が目に浮かぶ名訳だと思います。



今回も各方面から素材をお借りしています。いつもの「星空」と「桜吹雪」はそれぞれTyler Spurgeonさまalisatoさまから。「桜吹雪」はセピア効果を加えて「落葉」にしてます。「青空と雲」はRowntreeさまから、「グリーンフラッシュ」は小野さまからお借りしました。ありがとうございます。

夕陽動画はYouTubeを探し回りました。何十個も見た末にようやく理想的な夕映えが見つかりました。しかもグリーンフラッシュのオマケ付き。シュトラウスやアイヒェンドルフの見た夕陽は間違いなく山の端に沈むそれだったはずですが、そんな都合のいい夕陽動画が見つかるはずもなく、これはサイパン沖に沈む夕陽です。

小野さまが代表をつとめるサイパンの旅行社「ビーフリートラベル」は個人旅行の予約などを無料で手配してくれるようです。公式YouTubeチャンネルにはたくさんのグリーンフラッシュ動画がアップされています。サイパンでグリーンフラッシュを体験したい人は相談してみるとよいでしょう。きっと絶景スポットを紹介してくれると思います。「グリーンフラッシュって何?」って人はエリック・ロメールの「緑の光線」見てください。

どちらの音源も1953年に録音され同年公開されています。偶然だったのか、レコード会社の対抗意識の現れだったのか…。公開から50年以上が経過し、日本をはじめ著作隣接権保護期間を50年と定める国では、パブリックドメインとなっています。

それぞれ EMI とデッカの看板スターだったエリーザベト・シュヴァルツコップリーザ・デラ・カーザ。キャラがカブり過ぎです。EMI の大物プロデューサー、ウォルター・レッグを夫に持ったシュヴァルツコップが最後には得をしたような気がします。

シュヴァルツコップが後年ジョージ・セルと入れたステレオ盤(著作隣接権保護期間終了は2016年末)がこの曲の決定的名盤としてあまりにも有名ですが、このモノラル盤もすばらしい歌唱です。でもレッグと共に一語一語吟味に吟味を尽くし、検討に検討を重ねたであろう歌唱がうっとおしくなったらデラ・カーザをどうぞ。デラ・カーザ盤の収録順は現在一般的となっている曲順と異なるのですが、私の制作上の都合でシュヴァルツコップ盤と同じ「春」「9月」「眠りにつくとき」「夕映えの中で」に並べ替えています。



二人の歌唱で異なる点が気になりました。「春」の最後のフレーズです。

deine selige Gegenwart!

シュヴァルツコップは「selige」を2小節かけて反復して歌っています。

| deine selige | selige | Gegenwart! |

何度も聴き直してみましたがデラ・カーザのはこのように聞こえます。

| deine selige | deine | Gegenwart! |

どっちが正しいのか…。楽譜に当たってみて驚いた。
二人とも間違ってます!(爆) 正しいのはこちら。

| deine selige | Ge------genwart! |

「Gegenwart」を5小節にわたってワンフレーズで歌うように書いてあるのです。遅めのテンポで歌うと息が持たないので変えてるのかもしれません。

私の確認した範囲ではテンポ速めのフラグスタート、ポップ、フレミングが楽譜通り歌っていました。ノーマン、ハルテロス、そしてシュヴァルツコップもステレオ盤では「selige」の反復を3小節+1拍伸ばしたあとブレスを入れて「Gegenwart」を2拍+1小節で歌ってますね。ヤノヴィッツはそのちょっと前でブレスしていますが、何歌ってんのかはよくわからない。他にもいろんなやり方があるみたいです。

「眠りにつくとき」最後のフレーズの「tausend-」の繰り返しも、本来楽譜では繰り返さずにブレス無しで歌うようになっています。また、「9月」の最後のフレーズ、今回のシュヴァルツコップとデラ・カーザは楽譜通り歌ってますが、ここもいろんなやり方があるみたいです。

さて、絶賛投票受付中の「リヒャルト・シュトラウスの最高傑作とは?」に続いて、生誕150年記念にもう一つ投票ネタを投下します。

投票 → 《4つの最後の歌》 最後に最高だったのはどの歌?
投票 → リヒャルト・シュトラウスの最高傑作とは?

投票締め切りはどちらも2014年11月23日です。

リヒャルト・シュトラウス
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