オペラのためのオーディオ(2)~ スピーカー KEF iQ5

ピュアオーディオ第2回はスピーカー KEF iQ5 の紹介です。KEF のスピーカーは2モデルに渡って20年も使ってるんですが、いまだにこのブランドの正しい読み方を知りません。ケフでいいのかな?それともケーイーエフですか。

オペラのためのオーディオ

KEF はヨドバシやビックに行けば置いてある程度にはメジャーだけどノジマにはない程度にマイナーで、ホームシアター愛好者やアニソン・リスナー(一時期ブックシェルフ型がその方面にウケた)にはよく知られているけど、一般の認知度からいうとちょっと微妙なブランドです。もともとイギリスのメーカーですが資本は今では香港かもしれない。安いほうのモデルは中国製(iQ5も同様)ですが、開発設計はイギリスでやってると思います。

KEF のウリはなんといってもコアキシャル(同軸)スピーカーです。

上の画像だとちょっとわかりにくいですが、銀色のスピーカーの中央のへそのところに小さなドームが見えます。ウーファーのへそにツイーターが埋め込まれた形状になってます。UniQドライバーって名前でいろいろ特許を取ってるらしいです。(これも読み方が謎……ユニキューなのかユニークと読ませたいのか)

他にも同軸を採用しているブランドはありますが多いとはいえないでしょう。たいていのスピーカーはツイーターとウーファーを上下に並べた配置になっているので、上下のスピーカー間での位相のズレが避けられません。あとヴァイオリン・ソロなんかを聴いたときに、最高音域から一気に降りてくるようなパッセージでスピーカーから出る音も下に下がったように感じることありません?私の気のせいかもしれませんが……。

同軸スピーカーにはそういう心配がありません。ツイーターとウーファーの音響心が同じ軸の上にあるので定位感が抜群です。ソロ楽器やソロ・ヴォーカルがステレオ音場の一点にピタリと収まります。KEF はオペラにはまさにうってつけのスピーカーといえるでしょう。

ピュアオーディオKEF を初めて聴いたのはアメリカに長期滞在中のことでした。オーディオショップの視聴スペースにあったそのQ10というスピーカーを見るまで、KEF というブランドも同軸スピーカーなるものの存在も全く知りませんでしたが、音を出してもらったら魅せられましたね~。その場でお買い上げしてトランクに詰めて日本に持って帰ってきました。馬鹿ですね~。日本でも売ってたんですけどね。まあ円高で少し安く買えたけど。今思えば、オーディオショップのお兄ちゃんが試聴用に女性ヴォーカルをかけたのは同軸スピーカーの特長をわかったうえでやったことだったんでしょう。これ聴かせれば絶対落ちるって。

KEF のもうひとつの特長は広域拡散性に優れている点でしょう。

ツイーターから出る高音域は元々直進性が高くあまり広がらないんだそうです。ですから、ステレオ・スピーカーは二等辺三角形の頂点でツイーターと耳の高さを同じにして聴きなさいというのがセオリーで、スピーカーによっては頂点から少しリスニングポイントがズレただけで、突然寄ったほうの音ばかりが聴こえたり印象がガラリと変わるというのはよくあることです。

KEF の同軸スピーカーはツイーターから出た高音がウーファーの曲面に沿って広がって進むことにより直進性が和らげられて拡散するらしいです。音響工学的なことはよくわかりませんが、聴いてみるとそれは実感できます。KEF は三角形の頂点から少々ズレた所に座っても音の印象があまり変わりません。どの位置で聴いてもそれなりに聴けます。リスニングポイントがアバウトでよいというのは、逆にスピーカーの設置位置や向きにあまり神経質にならないで済むということにも繋がります。これ精神衛生上けっこう大事なポイントだと思いますよ。

弱点はというとあまり思い浮かびませんが、iQ5 に限って言うと低域の不足に不満を感じる人はいるかもしれない。こちらのページでスペックが見られます。ウーファーの口径は13センチです。下に同口径のウーファーがもうひとつついてますがオマケです。たいして鳴ってません。でも私には全く不満はありません。このシリーズ記事でおいおいわかってくると思いますが、地を這うようなとか腹にズシンと響くようなとか、そういう低音に私は全く興味ないのです。ですので私と好みが真逆な方には私のお勧めはあまり参考にならないかもしれません。

いずれにせよ、この iQシリーズはとっくにディスコンです。新品は見つからないでしょう。中古で程度のよいものが安く手に入るようであればお勧めです。スピーカーの経年劣化で心配なのはウーファーのエッジですが、私の部屋にある Q10(約20歳) iQ5(約8歳)、いずれもエッジに問題はないように見えます。

ピュアオーディオ新品がよければ新Qシリーズという後継機種が出てます。でも私はまだ一度も聴いたことがないんです。どんな音に仕上がっているんでしょうね。同軸ユニットは健在です。残念なのはエンクロージャーの形状で、ティアドロップ型を止めてしまったことです。ハイエンドからエントリーに至るまで全モデルで止めてます。ティアドロップ型は平行面を無くして余計な反射音を減衰させるだとか、構造的に強くなるので有利とか言われてますけど、ほんとのところどの程度効果があるのか私にはわかりません。ただ見た目はカッコいいし金がかかってる感じがします。私が思うに効果がなかったから止めたわけではなく、リーマンショック後利幅の取れるハイエンドモデルが売れなくなり、全モデルに渡ってコストダウンの必要に迫られたせいではないかと……。

ところで、オーディオ試聴会に足を運ぶと、メーカーの担当者が「これからスピーカーの試聴会を始めます」と言って音を出してくれます。スピーカーを聴きましょうと言われたらそれはスピーカーの音と思うでしょう。でも全く同じシステムが並んでいても「アンプの試聴会を始めます」と言われたら、今聴いている音はアンプの音と思うのではないでしょうか。

いったい私は何の音を聴いてるんでしょうね。

上にもリンクを貼った記事には冒頭『オーディオ再生において、およそ70%の支配力を持つというスピーカー』って書いてあります。一般的にはそういうことになってるんでしょう。

でも私は音をより強く支配しているのはアンプのほうだと思っています。なぜならスピーカーはパッシヴなデバイスだから。もしアンプを変えても音が変わらないスピーカーがあるとすればそれは悪いスピーカーということになるでしょう。構造的にはパッシヴなのにパッシヴに機能していないことになるからです。そこを突き詰めていくと必然的に無個性で無色透明なスピーカーが最も優れていて音を作るのはアンプであるという結論、というか理想にに到達するはずです。

というわけで次回はアンプの紹介です。私が聴いている音は今日紹介した iQ5 の音ではなく、トライオード TRV-35SE の音というわけです。

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