【悲報】TPP11でベームの 《フィガロ》がお蔵入り決定した件

オペラすっかり油断してました。TPP11ですわ。来年から著作権、著作隣接権、いずれも保護期間が50年から70年に延長です。これで次のパブリックドメインデーは2019年1月1日ではなく、2039年ということになります。(それも延長されるに違いないけど)

対訳はこちら → フィガロの結婚

11月がタイムリミットだと聞いていたのに、それにしては夏が終わっても何の音沙汰もないし、「これはイケるのでは」と、恐る恐るベーム盤の動画対訳制作に着手してしまった阿呆はこの私です。

ベーム指揮によるモーツァルト《フィガロの結婚》全曲盤は1968年公開。したがって2018年12月31日に著作隣接権保護期間50年が終了し、翌日2019年1月1日にはパブリックドメインとなるはずでした。TPP11に伴う著作権法改悪がそれまでに施行されなければ。

毎年1月1日に「喪が明けた」音盤を動画対訳にしてYouTubeに上げてきましたが、来年元日はこの《フィガロ》を出すつもりでした。こんなニュースも出て「万歳!ラストスパート掛けるべ」と先週一気に全4幕の編集を完了し、あとはチェックを残すのみとなっていました。ほらこの通り!



ビックリした?駄目じゃん公開しちゃ!タイホされちゃうよ!

まあご覧くださいよ。音入ってないから(爆)

CD持ってる人はこの動画に合わせて再生すればイタリア語日本語対訳字幕を見ながら《フィガロ》を楽しめますよ。CD持ってない人は Spotify(スポティファイ)でどうぞ。音と字幕がズレたら「PLAY」と「PAUSE」を交互に押して調節してね。



とうとうその日が来てしまいましたなあ。TPP11の発効があと2日遅れれば、延長は1年先の2020年からだったのにね。

今回のニュースで気をつけなくてはいけないのは、正確に言うと、TPP11のせいで保護期間が延長されたわけではないという点です。だって、TPP11は保護期間延長を凍結項目に指定したんだもの。

アメリカが不参加を表明したあと、残りの11カ国でTPP11締結に向けて動き出したとき、合意済だった項目のうちいくつかは凍結項目としてアメリカが参加するまで除外とされた。著作権保護期間延長もその凍結項目のひとつだった。TPP11に参加するにあたって、国内法を整備して著作権保護期間を50年から70年に延長する必要は全くなかった。

ところが、今年の2月頃に観測気球が上がったなあと思ったら、あれよあれよという間にこんなことに。凍結項目なのに先行して延長しちゃうんだと。「交渉材料に使えばいい」とか言っていた東大教授がいましたけど、アメリカを引き込む前にここでスペードのクイーン切ったら意味ないじゃん!

要するに、これは国際問題ではなく、国内問題なのです。外圧を理由に思うがままに政策を進めるポリシーロンダリングは役人の得意技ですが、今回の場合は外圧ないのに、あるように見せかけてゴリ押しするという高度なテクニックを使ったようです。(INTERNET Watchの記事はそのテクニックに引っかかってしまっているように思える)

長年この問題を追ってきたジャーナリストでもこの1年の動きは説明できないそうです。いや、この摩訶不思議な著作権法改悪をまるっと語れる人物がひとりいますねえ。

所詮事務次官まで昇りつめた男に過ぎないのに、「面従腹背」の一言ですっかりイイ人になっちまった前川喜平です。ここはイイ人ついでに、この20年間文科省と文化庁がやってきた保護期間延長スキームの内幕を、洗いざらいゲロってもらいましょうかね。

さて、保護期間が延長されなければ、来年公開するつもりだった1968年産の音盤は《フィガロ》の他にはこのあたり。実はベルリオーズも「ラクリモーサ」まで編集終わってるし。涙目……。

来年から20年間、1月1日の「新作」公開はないのだけど、私はそんなに落胆してません。このベームの《フィガロ》をちゃんと音付きで公開できる日が数年後にはやってくるんじゃないかと思っています。そのわけは、長くなったのでまた別に機会に……。

フィガロの結婚
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この記事へのコメント

よっちゃん
2021年03月13日 18:25
「音声なし対訳動画」の公開ありがとうございます。
さすがに、音声を付けての公開を準備されていただけありますね。
映像と音声のタイミングをうまく調整して再生すると、効果絶大です!
とくに、レチタティーヴォや三重唱などの動画表示は効果的です。
これなら、DVDやライブより台詞の細かい部分がよくわかると思いました。

あと、要望としては、
「音と字幕がズレたら『PLAY』と『PAUSE』を交互に押して調節してね。」
とありますが、できれば、
 【CDの再生開始調整のためのカウントダウン動画】
を追加していただければ、完璧です。

そういえば、「さまよえるオランダ人」は元々クレンペラー盤で企画されていたようですが、それの「音声なし対訳動画」を公開していただければ、ありがたいと思います。
2021年03月15日 21:00
よっちゃん様
コメントありがとうございます。私も先日カラヤンの《ワルキューレ》をCDで再生しながら、パソコンで字幕を流してみました。音アリでも音ナシでも、みなさんお好きなように使ってもらえるとうれしいです。

>カウントダウン動画
それやろうと思ったんですが、リマスター盤毎に冒頭の余白の長さが違ったりするとあまり意味ないなーと思い直して、止めてしまいました。でもなにもないよりマシかもしれませんね。検討しましょう。

>「さまよえるオランダ人」クレンペラー盤
【音アリ】動画をいろいろ作るのに忙しいので、なかなか【音ナシ】のほうまで手が廻りません。いまのところクレンペラーの予定はないですが、多くの方からご要望があれば考えましょう。

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