クライバーを偲んで… マーラー《大地の歌》YouTube動画公開

オペラ本日7月13日はカルロス・クライバーの命日です。あれからちょうど16年が経ちました。

毎年この日には偉大なカペルマイスターを偲んで、カルロスが振ったことのあるオペラやオペレッタの対訳テンプレをリリースすることにしていました。でも昨年を最後にネタ切れです。もう著作権保護期間が継続中のリブレットしか残ってません。

そこで今年からカルロスの命日には新しい企画を始めることにしました。

第一弾としてグスタフ・マーラー《大地の歌》全曲のドイツ語日本語対訳字幕付きYouTube動画を公開します。翻訳はwagnerianchanさまです。



1980年代から何種類も海賊盤が出回り、よく知られている1967年6月7日ウィーン、コンツェルトハウスのライヴです。2014年にウィーン交響楽団の自主制作レーベルから発売されたのが上のジャケ写です。なんで正規発売できたのかは謎。ちゃんと許可取ったのか?カルロス本人はもう死んでるし、子供たちは生前の父から「絶対クビを縦に振るな!」と厳命されていたに違いないので。

マーラー:大地の歌

 クリスタ・ルートヴィヒ(アルト)
 ヴァルデマール・クメント(テノール)
 ウィーン交響楽団
 カルロス・クライバー(指揮)

 録音時期:1967年6月7日
 録音場所:ウィーン、ウィーン コンツェルトハウス
 録音方式:モノラル(ライヴ)

ところで、なぜこの音源をこうやってYouTubeに上げることができるのか、違法アップロードではないのか。

もともと海賊盤だからオッケーというわけではありません。日本国の著作権法に則って上げてます。この音源は日本ではパブリックドメインです。(EUでどうなのかは知らん)

なぜ適法なのかの説明の前に、著作隣接権についておさらいしておきましょう。

著作権と著作隣接権は似て非なるものです。この《大地の歌》で言えば、著作権者はマーラー(ただし保護期間切れ)、著作隣接権者はカルロス、ウィーン交響楽団とソリスト他、という関係です。

著作隣接権の保護期間は、2018年の著作権法改悪で50年から70年に延長されました。したがって、1967年12月31日以前に公開(発売)された音源は保護期間50年をすでに経過してパブリックドメインですが、翌1968年に公開された音源は70年を経過した2039年1月1日になってようやくパブリックドメインとなります。

著作隣接権保護期間の起点は「録音年」ではなく「公開年」である点は注意が必要です。

この情報はたいていレコードやCDのジャケットに記載されています。(無いことも多くて苦労するけど)

℗1967 →これ以前ならパブリックドメイン
℗1968 →これ以降なら当分使えない

この「丸Pマーク」が著作隣接権保護期間の起点にあたる「公開年」を表しています。ちなみに「P」は「phonogram」の「P」です。

さて、ようやく本題。カルロスの《大地の歌》の著作隣接権保護期間はどうなっているのか。「丸Pマーク」を探してみましょう。

こちらの画像の左下隅をご覧ください。℗1967 と印刷されていますね。

つまりこの音源は1967年に(当時なら当然LPレコードで)正規発売されたと公式に表明されており、それゆえ日本ではパブリックドメインなのですよ。

驚愕の事実ですわね。カルロス史における重大事件ですよ。だって、カルロスのデビュー盤は1973年にグラモフォンから出た《魔弾の射手》であると、いままでみんな信じてたわけで、これが覆ることになります。なんとカルロスのデビュー盤は、それより6年前の《大地の歌》だったとは!

まあ、私も本気でこれを信じてるわけじゃありません。立ち上げたばかりの自主レーベルの運営に不慣れで、ウィーン響の中の人が「丸Pマーク」を「録音年」を示すマークと誤解していたのでしょう。本来は ℗2014 と記載すべきだったはずです。(カルロスの遺族の了解が取れているのかは脇に置くとして)

だから、もしウィーン交響楽団がこの記載ミスを公式に認め、HPで訂正と謝罪があり、かつわたくし管理人にもメールで直接謝罪があれば、今回の動画は削除しましょう。

「今年からカルロスの命日には新しい企画を始める」と上に書きました。でも、来年のネタはどうするのか。カルロスのパブリックドメイン音源は今回の例外を除けば存在しません。《魔弾の射手》がパブリックドメインになるのは2044年と遥か彼方です。もちろん海賊盤音源なんか使っていいわけない。

でもウチのYouTubeチャンネルをチャンネル登録している方なら、何がどんな形で出てくるのか、おわかりですよね?

大地の歌
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