バッハ《マタイ受難曲》全曲 クレンペラー指揮 YouTube動画公開

オペラ聖金曜日です。1時間後の19時から、ヨハン・セバスティアン・バッハ《マタイ受難曲》全曲のドイツ語日本語対訳字幕付きYouTube動画をプレミア公開します。翻訳はwagnerianchanさまです。

対訳はこちら → マタイ受難曲
動画はこちら → マタイ受難曲

1年前にリヒターの改訂版を出したときには、クレンペラーまでやり直すつもりはありませんでした。でも去年の秋に気づいてしまったのです。今年はクレンペラー没後50年に当たる年だって。じゃあやるしかないじゃないですか。

この音源は2017年末の時点で公開から50年以上が経過し、2017年まで著作隣接権保護期間を50年と定めていた日本では、パブリックドメインとなっています。パブリックドメインなんですけど、リヒターと同様にレコード会社からクレームが来ていて、この動画には大量の広告が出るものと思われます。ブラウザにアドブロッカーをアドオンして視聴されることを強くオススメします。



さすがにヴェルナーミュンヒンガーまでやり直すつもりはありません。次に《マタイ》をやるならフルトヴェングラーかもしれませんが、このライブ音源は権利関係が難しそうです。メンゲルベルクは音が悪すぎてあんまりやる気がしません。

ちなみに、クレンペラーの《ロ短調ミサ》は (P)1968 です。2018年の著作権法改悪により著作隣接権保護期間が70年に延長され、彼方へ飛び去りました。

バッハ:マタイ受難曲BWV.244 全曲

 福音史家:ピーター・ピアーズ(テノール)
 アリア:エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
 アリア:クリスタ・ルートヴィヒ(アルト)
 アリア:ヘレン・ワッツ(アルト)
 アリア:ニコライ・ゲッダ(テノール)
 アリア:ヴァルター・ベリー(バス)
 イエス:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
 ユダ:ジョン・キャロル・ケース(バリトン)
 ペテロ:ヴァルター・ベリー(バス)
 大司祭:オタカール・クラウス(バリトン)
 ピラト:オタカール・クラウス(バリトン)
 侍女1:ヘザー・ハーパー(ソプラノ)
 侍女2:ヘレン・ワッツ(アルト)
 司祭1:オタカール・クラウス(バリトン)
 司祭2:ジェレイント・エヴァンス(バリトン)
 目撃者1:ヘレン・ワッツ(アルト)
 目撃者2:ウィルフレッド・ブラウン(テノール)
 ハンプステッド教会少年合唱団
 マーティンデイル・シドウェル(合唱指揮)
 フィルハーモニア合唱団
 ヴィルヘルム・ピッツ(合唱指揮)

 オブリガート
  ガレス・モリス(フルート)
  アーサー・アクロイド(フルート)
  シドニー・サトクリフ(オーボエ、オーボエ・ダモーレ)
  ピーター・ニューベリー(オーボエ・ダ・カッチャ)
  ヒュー・ビーン(ヴァイオリン)
  ベラ・デカニー(ヴァイオリン)
  デズモンド・デュプレ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
 通奏低音
  ジョージ・マルコム(チェンバロ)
  ヴィオラ・タナード(チェンバロ)
  レイモンド・クラーク(チェロ)
  ジェイムズ・W・マーレット(コントラバス)
  ラルフ・ダウンズ(オルガン)
 フィルハーモニア管弦楽団
 オットー・クレンペラー(指揮)

 録音時期:1960&61年 (P) 1962
 録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール、他
 録音方式:ステレオ(セッション)
 プロデューサー:ウォルター・レッグ
 エンジニア:ダグラス・ラーター

冒頭の合唱が約12分。先日のエルプフィルハーモニーからのYouTubeライブだと約6分。クレンペラーのテンポに耐えれらなくなったら、倍速再生してください。この録音の伝説的な遅さにまつわる伝説にはさまざまなバージョンが流布しているようですが、ノーマン・レブレヒトが伝えるところによるとこうです。

オットー・クレンペラーがバッハのこの偉大なるオラトリオをレコーディングしようとしたのは70歳代の半ば、スローダウンしていた時期であった──実際のところテンポの振りが遅かったので歌手たちは息を保つのに苦労していた。休憩時間の作戦会議で、誰かが話をつけに行こうとなった。ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウが当たりくじを引いた。

「クレンペラー博士」、と偉大なバリトンが切り出した。「なんだい、フィッシャー?」「私は昨夜夢を見たのですが、ヨハン・セバスティアン・バッハが出てきまして、マタイ受難曲を歌ってくれてありがとうと言ってくれたのですが、『でもいったいなぜあんなに遅いのだ?』と訊かれたのです」。クレンペラーは苦い顔をして譜面台を叩き、二倍遅いテンポで指揮を再開した。歌手はみなほとんど酸欠状態になった。突然、クレンペラーが「フィッシャー!」と荒々しい声で叫んだ。「なんでしょう、クレンペラー博士?」「私も昨夜夢を見たのだ。私の夢でも、ヨハン・セバスティアン・バッハがマタイ受難曲を指揮してくれてありがとうと言ってくれた。しかしこう言うのだ、『あのフィッシャーとかいうのは何者だ?』とね」。

もしこれが実話で、レコーディングが曲順通りに進められていたとしたら、DFDがクレンペラーに夢の話を切り出したのは、「ゲッセマネの祈り」あたりではないかと推察します。ここでのテノールとバスのアリアは際立って遅くなっています。

ところで、以前「ゲッセマネの祈り」の謎について書いたことがあります。なぜ、イエスがひとりで祈った内容がマタイ伝に残っているのか。弟子たちは寝ていて誰も聞いてないのに。イエスはそれを誰に語ることもなく処刑されたのに。やはり疑問に思った人はたくさんいたようで、礒山先生によると古来神学上の問題点として議論されてきたそうです。

先日、某キリスト教系新宗教の方々が訪問営業にいらっしゃったので、この点を尋ねてみました。曰く、聖書は神の力によって書かれているので可能なんだそうです。なるほど、とてもわかりやすい説明です(棒)。

マタイ受難曲
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この記事へのコメント

この世は仮の世7v
2023年09月14日 06:08
マタイ受難曲で貴殿達の訳詩をわたくしが描く漫画で使用したいです。
許可は頂けるんでしょうか?
漫画のタイトルは「星の十字架」です。
よろしくお願いいたします。
管理人
2023年09月14日 08:33
この世は仮の世7vさん

お問い合わせありがとうございます。

>マタイ受難曲で貴殿達の訳詩をわたくしが描く漫画で使用したいです。許可は頂けるんでしょうか?

マタイの訳文はクリエイティブ・コモンズでライセンスされています。したがって、CCの条件に従えば、その範囲内で許諾なしに利用できます。
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